水草の花 22
スーパーに着いた。
花のコーナーに行く。
水沢さんは、
他人が触ったものを触ることができない。
「 この切り花、水から出ていてしおれそうなんだ。
水沢さんがもどしてあげてほしいんだ。」
「 ・・・ かわいそう 、」
水沢さんは、素手で花を水につけた。
「 大丈夫でしょ? 」
「 あ、でも、早く手を洗いたい。」
「 がまんして慣れるんだよ。」
「 がまんと思うとよけいに洗いたくなる。」
「 じゃあ、なにか甘いものでも買って食べよう。」
チョコレートのコーナーに向かった。
「 このブラックチョコレート好きなんだ。」
「 いろんなのがある。」
「 カカオ87%はかなりにがいよ、食べてみる? 」
「 また今度にする。私、イチゴのチョコがいい。」
「 うん、それ買って食べよう。」
「 水沢さん、どう? 」
「 うん、おいしい。イチゴ味。」
「 手は? 」
「 あれ ・・・ あんまり気持ち悪くない。」
「 あー 良かった。」
「 大丈夫 、私、大丈夫みたい 長谷川君 」
水沢さんは、少し涙ぐんでいる。
「 良かったね。」
「 うん、良かった。ありがとう、嬉しい。」
「 もっともっと良くなるよ。」
「 私、人としてもうだめだと思ってた ・・・ ありがとう。」
すごく安心した。
嬉しかった。
ほんとうに嬉しかった。