水草の花

お読みくださいまして、ほんとうにありがとうございます

水草の花 17 



「 長谷川君、昨日はほんとにありがとう。」
「 あ、水沢さん、楽しかったね。」
「 ヒマワリの絵もかざったよ。部屋が明るくなった。」
「 良かった、なんか嬉しいよ。」
「 それでね長谷川君、バラ園に行ったことある? 」
「 小さいときにつれていってもらったかな? 」
「 今度、行ってみようよ。長谷川君なら楽しめると思う。」
「 え、じゃあ、また日曜日、」

 気持ちが舞い上がる。
 水沢さんがさそってくれた。

 ほんとうに嬉しかった。

 僕は水沢さんのことが大好きになっていた。





 絵が完成に近づく。

 今まで描いてきた絵の中で、一番輝いてると思う。









水草の花 16 



 ある絵を、水沢さんはずっと見ている。

 僕は先に見終わり、出口についた。
 ミュージアムショップで、ゆっくり水沢さんを待つ。

「 長谷川君、ありがとう、いっぱい見れた。」
「 うん、良かった。おなかすいたから食べていこう、
  ここのカレーおいしいんだ。」
「 うん、私もカレー好き。」

 席について注文した。

「 部屋にかざりたい絵あった? 」
「 うん、えっとね ・・・ ヒマワリの絵。」
「 あのゴッホの絵、すごいよね。」
「 うん、迫力あってあこがれる。」
「 僕もあの絵大好きだな、ひきこまれる。」
「 部屋にかざったら雰囲気かわるよね。」
「 じゃあこれ、プレゼント、
  絵ハガキだけど額に入ってる。あのヒマワリの絵。」
「 えー! わー! ありがとう‼ 」
「 小さいけどね。」
「 でも迫力ある。嬉しい。ほんとにありがとう。」

 カレーライスが運ばれてきた。

「 カレーもいいでしょ。」
「 うん、すごくおいしい。」
「 辛いけどね。」
「 うんうん、辛いね ・・・ 」





水草の花 15 



 日曜日の朝、10分前に駅に着く。
 水沢さんがギリギリに来る。

「 ごめんなさい、待たせちゃったよね。」
「 大丈夫、さっき来たところ。」

 早速、電車に乗る。
 少し混んでいる。
 水沢さんは頑張って立っている。

「 つり革、もたないの? 」
「 うん、へいき。」
( あれ? 園芸部って、きたえる必要あるのかな? )



 美術館は意外に空いていた。

 モネの風景画、優しい光を感じる。
 ルノワールの人物画、美しい光を感じる。
 セザンヌ静物画、力強い光を感じる。

 シニャックの点描画がある。

「 こんな絵を描きたいんだ。」
「 うん、すごく輝いてる。」
「 難しいんだ、あたりまえだけど。」
「 長谷川君の絵も輝いてるよ。」

 ・・・ しばらく一緒に見てまわった。


「 じゃあ、出口で待ち合わせにして、自由に見ようか。」
「 え ・・ 」
「 ゆっくり見たらいいよ、それじゃあ、あとでね。」

 それぞれ、自分のペースで見ることにした。


 絵がたくさんある。
 楽しんでくれるかな ・・・







水草の花 14 



 美術部では、次の部長を決めていた。

 立候補者の名前を書いて投票する。
 山口が選ばれた。

( あれ? 僕の名前も一票入ってる。)

 佐藤が言う。
「 おまえは、まわりが見えてないからダメだね。」

 立候補もしてないのに、なぜそんなに厳しいのだ。
 でもそのとおりか、注意しよう。

 ただ、誰が入れてくれたのか少し気になる。
 山口かな?



 山口が部長だと安心だ。





水草の花 13 



 点で絵の具をのせていく。

「 不思議な描き方 ・・・ 」
「 そうでしょ、少し離れて見て、」

「 輝いてる! 」
「 おもしろいでしょ。」
「 うん、びっくりする。」

 点描はスーラが追求した技法だ。
 絵の具は混ぜると光が弱っていく。
 混ぜないで、点の形でとなりあわせにおいていく。
 そうすると、見る者の頭の中で混ざりあい、
 光がより強く感じるようになる。

 水沢さんは近づいて再び絵を見る。

「 緑、青、黄、赤 ・・・ なんかすごいね。」

 スーラはほんとうにすごい画家だ。

「 そうだ、点描の絵があるから美術館に一緒に見に行こうよ。」
「 え、私? ・・・  私、絵わからないから ・・・ 」
「 わからなくて大丈夫。
  買って部屋にかざるならどれにしようかなって見るんだよ。」
「 えー、そんなのでいいの? 」
「 うん、僕はいつもそうやって見てる。おもしろいよ。」
「 ・・・ おもしろそう、行ってみようかな。」
「 うん、じゃあ、日曜日に駅で待ち合わせ。」


 喜んでくれるといいな。






水草の花 12 



 それからの放課後は、
 絵と水沢さんと過ごす時間になった。


 水沢さんは花の話をよくしてくれた。

 春はレンゲ
 夏はポーチュラカ
 秋はキンモクセイ
 冬はビオラ

 小さな花がとくに好きと話した。

 僕は花の種類がよくわからなかったが、
 ユリがキレイで好きだった。
 でも、今は水草の花にひかれている。


 健気でかわいい。

 気持ちが明るくなるような気がする。




水草の花 11 



 次の日、キャンバスとイーゼルをかつぎ、小川に向かった。
 なんとかこの感動を表現したい。

「 あ、長谷川君、」
「 水沢さん、昨日はいろいろ教えてくれてありがとう。」
「 え、そんな ・・・ 、長谷川君、絵を描くの? 」
「 うん、美術部で描いてる。
  今度、高校展があって、この景色を描こうと思って。」
「 うわー、私、絵が描けないからすごいと思う。」
「 うまくないけどね。」

 早速、描きはじめる。
 横で見てくれている。
 少し照れる。

「 まだ下書きみたいなものだよ。」
「 ふーん、でも、もう雰囲気が出てると思う。」




 またコンビニに寄って帰る。
 僕はコーラ、水沢さんはジャスミンティ

「 ありがとう。」と水沢さんは言う。

 ・・・
 僕は言えなかった。
 次は頑張ろう。