水草の花

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水草の花 24 



 徐々に、水沢さんの口数が減ってきていた。

 ここは頑張りどきだと僕は意気込んだ。
 水沢さんのためだ ・・・ 強気だった。

「 元気だしてね。」
「 うん、ありがとう。 」
「 次はいよいよトイレのドアだね。」
「 ・・・ 」
「 頑張ろうね。」
「 ・・・ うん 」

 放課後、静かになった校舎。
 トイレの前に立つ。

「 よし、あけてみて。」

 水沢さんは、小さくため息をついて、
 苦手なドアのとってにふれる。

「 えらいよ、水沢さん、」
「 ・・・・・・ 」
「 じゃあ、コンビニによって行こうか。」

 僕は気をそらそうと歩きはじめた。

「 最近、カレー味のカップめんが売ってなくて、」
「 ・・・ 」
「 暑くなるとなくなるのかな。」
「 ・・・・・・ 」


 水沢さんは立ち止まり、反対側に歩きだした。

「 え、ちょっと、どうしたの、」

 だまったまま、歩いていく。

「 待って、水沢さん、」

 ふりかえった水沢さんは、涙を流していた。

「 もう、ほっといて  」

 肩がふるえている。
 ゆっくりうつむき、
 再び背を向け歩きだす。

 止めなきゃ ・・・   声が出ない。

 またやってしまった。
 相手の気持ちを感じられずにつっぱしる。


 水沢さんのうしろ姿がとても小さい。


 廊下のかどで見えなくなる。


 つらい
 泣きそうだが涙が出ない
 息が苦しい


 ・・・・・   もう終わりだ。